トキドキ☆ブログ

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刻の桜 ~トキのサクラ~(8話-1)

ホッと胸をなでおろすサラ…しかしその様子を目を丸くして見つめる目がある。
そう、ジョージである。

半開きになった口をようやく動かすと
「どうなってるだ? どういうことだこれは?」
わけわからず、混乱した頭で質問して来た。

「あ、ゴメンゴメン…パパには言ってなかったけど…」
「このシグレの本当のご主人さんで、うちの桜の精霊さんでトキって言うの」
「丘の上の桜の言い伝えはパパも知ってるよね?」

「も…もちろん…聞いた事はあるが…単なる言い伝えだと思っていたのに…」
ジョージは次から次に起こる不可解な出来事に混乱し、正常な判断が出来る状態ではなかった。

「お前は知らんだろうが、2歳のころ桜の横の泉で溺れそうになったのを助けたのは俺だぞ!」
「呼び出されているわけじゃないが、真横だったんで時の魔法で助けてやったのさ」
「今さら言う事ではないが、感謝するんだな小僧」

相変わらず、どんな人でも小僧、小娘扱いのトキであった…

「時の魔法? なるほど、そりゃ勝てん…」
話を聞いていた龍馬が口をはさんだ。

「まあ、人間にしては頑張った方だ!」
トキは杖を振りかざすと、自慢げに上から目線でさとす。

「わしはこれから、この武器を長州で売って来る」
「その帰りに米を積んでくるが、それまでまっちょってくれんがや?」

龍馬はジョージにそう伝えると、時間を惜しむように急いで桂たちの元に向かった。
6日ほど萩の町を散策していると、龍馬は沢山の馬車に大量の米を積み戻ってきた。

「すまんの~ 思ったより遅くなってしもうたがや」
そういうと、急いで米をジョージ達の船に積み替える。

「勝さんに聞いた話だと、これくらいの量は積めるはず…」
そう、以前勝がサラに船と航海の事を詳しく聞いていたのは、この為だったのである。
ただ、そこにサラも一緒に来たのが、勝の誤算だった。

残りは龍馬の船に積み、3隻で薩摩に向かった。

来る時とは違い、潮の流れに逆行するため、思ったより進まない…
しかも長崎の沖を通るのは危険とみなし、大きく五島列島の外側を迂回する航路…

トキは退屈であった…

フラフラ~と龍馬の船に飛んで行くと、剣の稽古中の龍馬が見えた。
「おうおう、やっとるやっとる」

トキは龍馬の前に降りると…
「おーい龍馬よ、暇で体もなまるし、ちと俺とやってみんか?」

相変わらず前に立つだけで、そのオーラに押しつぶされそうになる。
「この男…」
龍馬は稽古でも普通に斬って来るんじゃないか?と身の危険を感じていた。

「そりゃ構わんが…剣は危険だ、竹刀で良いかのお~?」
「竹の剣か…ま、構わんが拍子抜けだな」

トキは一瞬のスリルがたまらく快感だったが…
やはり普通の人間の思考とはかけ離れていた…

「どこからでもかかって来るがいい」
ダラっと竹刀を無作法に構えるトキ…
龍馬が意を決し襲い掛かる。

面、胴、籠手…
元々変則的な動きの龍馬!

相手の意に反した虚をつく剣も取り入れるが…
その剣を、流れる水のように無駄なく受け流すトキ。

「これは、トキの拳」
北斗の拳の作者様、ゴメンなさい)

「クソッ!! 当たる気がせん」
「これならどう(胴)じゃあ~~?」

シャレを交えながらも、龍馬は覚悟を決め…
胴を見せかけにして虚をつきスッと上段に構えると、そのまま渾身の力で振り下ろした。

「!? 当たった!!」
龍馬が決めたと思えたトキの姿は、残像だった…

「バシッ!!」
2つの鈍い音がする。

1つは龍馬が床を叩いた音だが…
風がすり抜けたかと思うとと同時に、龍馬の横腹に痛みが走った!!

「シャレのお返しや!」
龍馬の真後ろから声が聞こえる…
トキは素早い動きで面をかわすと、すり抜けざま胴をさらっていった。

「いたたた…こりゃどうもならん」
「この前は戦わなくて正解じゃったわい」

龍馬は参ったとばかり、脇腹を抑え竹刀を下ろした。

「フフッ…面白い男よの~」
トキが今まで戦った人間の中で、この男は群を抜いて強い!

その男があっさり負けを認めた瞬間にトキを見た目は…
ゆったり流れる清流のように透き通っていて、なんとも不思議な感じだった。

「この男の意思は固い…」
「この先どうなるか楽しみだな…」

トキは心の中で呟いた。