次の日、いつものように食卓についたレニータ…
一人寂しく朝食を取りながら、これからの事を考えた。
「さて、どうしようかな…5年間、あそこのダンジョンには入れないし…」
「これから新しいダンジョンを探して籠るのもね~…」
「そう言えば、スケルトン・ジェネラルの【カーネリー】にもう一回挑みたいけど…」
「なんかアイツには、まだ勝てそうな気がしないのよね…なんでだろ…?」
レニータの直感が、【カーネリー】との再戦を拒んだ。
「レベル以上にある威圧感…技のキレ…【レオン】と組んで戦ってもキツイ気がするわ」
あの時と比べ、レベルは2つ上がり、大幅にステータスも上昇している。
【レオン】という、心強いパートナーもいる。
しかし、一度心深く刻まれた恐怖は、なかなか消えるものではなかった。
その時、レニータはただならぬ視線を感じた。
執事の【オースティン】が、ジッとこちらを観察するように見ていたのである。
こちらに気付いたようで、【オースティン】は目を逸らし、立ち去ろうとしていた。
「そう言えば、以前見た時は《鑑定》レベルが低くて良く分からなかったけど…」
「どれくらい強いのかしら…?【オースティン】を《鑑定》!」
★☆ メインステータス ☆★
≪黒槍術士・ダンジョンマスターB≫
【オースティン・キャンベル】(67歳)[職業=クラーク家執事・Bランク冒険者]
LV=55
HP=438
MP=125
SP=200
●サブステータス
筋力 =150
丈夫さ=160
知力 =100
精神力=110
持久力=180
魔力 = 80
素早さ=210
器用さ=140
集中力=120
運 =110
●所持スキル
槍術LV=9
闇属性魔法LV=6
毒耐性 LV=5
精神異常耐性LV=4
●特技
闇)《アシッドレイン》(毒の雨)
《ソウルハーデンス》(硬直)
《アビリティハイディング》(能力隠蔽)
槍)《一閃》(攻撃力+50%)
《跳ね返し》(カウンター)
《両眼突き》(2段突き)
《乱れ突き》(瞬時3撃)
「へえ~レベルはかなり高いのに、ステータスはそうでもないのね…」
「歳が関係してるのかしら?」
「まあ、あの歳でこの能力ってのもヤバイけどね…見た事もないような技もあるし」
「おまけに完全な武闘派かと思ったけど、闇属性魔法も使えるってキモ~…」(ココ聞こえていた)
「あの《アビリティハイディング》って魔法で能力隠蔽してるとしたら、かなり強いのかも」
「闇属性ってレアだし…面白そう~」
ちょっと様子を観察したくなったレニータは、こっそりと【オースティン】を付け回してみたが…
上級冒険者の執事である…とっくにバレていた。
「レニータお嬢様、何か私に用ですかな?」
廊下の角を曲がったオースティンが振り返り、こっそりと覗こうとしていたレニータに言った。
「あ…あれ?バレちゃった?ハハハ…」
レニータは焦って、誤魔化すように笑った。
「とっくにバレていますよお嬢様…そして…あなたの正体もね」
【オースティン】は鋭い眼光を放ちながら、こっちを睨んでいる。
「そ…そんな…正体って何の事かしら…ハハハ…」
更に焦ったレニータは、冷や汗を吹き流しながらトボけた。
「隠さなくてもよろしいですよお嬢様…私はとっくに気付いてます」
「お嬢様のその、お歳に似合わぬ存在感、威圧感…」
「その何とも言われぬ魔力が、駄々洩れとなっていますからね」
更に【オースティン】はこう続ける。
「昔はまだ可愛いと思えるレベルでしたが、ここ1年でかなり成長されているようですね」
「私もこの歳で衰えはしましたが、上級冒険者の一人…お嬢様の強さには凄く関心がございます。
「ひとつ、この私とお手合わせ致しませんか?」
「もちろん、この事は誰にも申しません」
「まあ、バレていたなら仕方ないか…」
「私も丁度、手詰まりで暇してた所…いいでしょう、お手合わせしましょう」
レニータと【オースティン】はお屋敷の裏口から、町外れの森の中へと入って行った。
「さて、この辺りでよろしいでしょうか?」
開けた草原に出たレニータたちは、数十メートル程離れて対峙していた。
「良いわよ…どこからでも掛かってらっしゃい」
「辿り着けたらの話ですけどね!」
レニータは杖に魔力を集中し、魔法を放った。
「《ファイアーバレット》!」
空中に描かれた凄まじい数の魔法陣から、炎の弾がマシンガンのように放たれる。
最初は1つだった魔法陣も、火魔法レベルの上昇と共に増え、今では20個以上もある。
「詠唱省略に、しかもこの凄まじい威力…」
「《疾風》!」
避けきれないと察知した【オースティン】は、固有スキルの《疾風》で、一気に間合いを詰めた。
「お嬢様…ご覚悟を!漆黒の闇よ…その者の魂を包み、自由を奪え…《ソウルハーデンス》」
【オースティン】は、レニータの動きを止めるべく、闇魔法を唱えた。
「まだまだ~…闇の雨…毒となりて降り注げ…《アシッドレイン》」
【オースティン】はレニータの《ファイアーバレット》を避けつつ、2つ目の魔法を唱える。
が…しかし、レニータには殆ど効果がなかった。
17階層に4ヶ月以上籠り、レベルは上がってないものの、ステータスは大幅に上昇していた。
★☆ メインステータス ☆★ [※()内は前回からの増量値]
≪賢者≫
【レニータ・クラーク】(11歳)[職業=なし]
LV=6
EXP=8,207,400
HP=580(+50)+(内・装備分+50)
MP=870(+40)+(内・装備分+50)
SP=610(+30)
●サブステータス
筋力(物理攻撃力) =320(+30)+(内・装備分+30)
丈夫さ(物理防御力) =380(+30)+(内・装備分+30)
知力(魔法攻撃力) =590(+30)
精神力(魔法防御力) =570(+30)
持久力(HPに影響) =350(+30)
魔力(MPに影響) =640(+30)
素早さ(速さ回避力) =340(+20)+(内・装備分+50)
器用さ(クリティカル)=390(+20)
集中力(スキルに影響)=570(+30)
運(ステータス上昇率)=520(+10)
●所持スキル
火属性魔法LV=15(+3)
水属性魔法LV=11(+2)
風属性魔法LV=11(+2)
土属性魔法LV=13(+3)
光属性魔法LV=16(+2)
闇属性魔法LV=10(+2)
杖術LV=14(+2)
剣術LV=14(+2)
槍術LV=14(+2)
鑑定LV=9(+2)
精神異常耐性LV=12(+2)
状態異常耐性LV=10(+2)
●特技
火)《ファイアーバレット》(炎の弾)
《ファイアーキャノン》(炎の砲弾)
《ファイアーストーム》(炎の竜巻)
水)《アイスランス》(氷の槍)
《アイスブリザード》(氷刃の吹雪)
風)《ウインドカッター》(風の刃)
《テイルウインド》(身体能力向上)
《ウインドレーダー》(探知)(New)
土)《ストーンウォール》(石の壁)
《アイアンウォール》(鉄の壁)
《クリスタルシールド》(透明な魔法障壁)(New)
光)《ライト》(光の玉)
《エクストラヒーリング》(状態異常回復・精神異常回復・全身治癒)
《ワープ》(空間移動)
闇)《アシッドレイン》(毒の雨)
《ソウルハーデンス》(硬直)
●特殊固有スキル
《無詠唱魔法》
《詠唱省略》
《解析》
闇魔法でも【オースティン】を上回り、精神異常耐性レベル12に、状態異常耐性レベル10…
効くわけなかった。
「そんなもの、防ぐ意味もない…」
「《アイスブリザード》!」
レニータは中級水魔法を唱えた。
「何…?火魔法の次は、真逆の水魔法だと!!」
「しかもこの威力…」
【オースティン】は、無数の氷の刃に切り刻まれ、氷結寸前となった。
その時…
「うおおおおーーー…」
【オースティン】は全身に力を込め、《アビリティハイディング》の効力を打ち消した。
★☆ メインステータス ☆★
≪黒槍術士・ダンジョンマスターB≫
【オースティン・キャンベル】(67歳)[職業=クラーク家執事・Bランク冒険者]
LV=58
HP=788
MP=250
SP=400
●サブステータス
筋力 =300
丈夫さ=320
知力 =200
精神力=220
持久力=360
魔力 =160
素早さ=420
器用さ=280
集中力=240
運 =220
●所持スキル
槍術LV=9
闇属性魔法LV=6
毒耐性 LV=5
精神異常耐性LV=4
●特技
闇)《アシッドレイン》(毒の雨)
《ソウルハーデンス》(硬直)
《アビリティハイディング》(能力隠蔽)
槍)《一閃》(攻撃力+50%)
《跳ね返し》(カウンター)
《両眼突き》(2段突き)
《乱れ突き》(瞬時3撃)
●特殊固有スキル
《疾風》
《黒雷閃》
「これで決める!《疾風》!」
またしても一気に距離を詰める【オースティン】
「お嬢様、失礼します…」
「地獄より来たりし暗黒の雷(いかづち)…全てを闇に包み、炭へと成らん…」
「槍技、《黒雷閃(こくらいせん)》」
【オースティン】もあのダンジョンで10階層のボス、【ダークナイト・バロリー】を討伐!
この固有スキルを会得していたのだった。
「この技は…【バロリー】の固有スキル《黒雷閃》」
レニータの固有スキル《解析》が、一度見た技を見切っている。
「無数の突きに込められる黒い雷に、複数の状態異常が付与されている」
「まずはこの突きを交わす…《クリスタルシールド》!」
「そして防ぐ事の出来ない、状態異常付与の黒い雷を…《エクストラヒーリング》!」
「中和させる!」
レニータは《黒雷閃》を防ぎ、効力を無効化した。
「な…なんと…一国に数人しかいないと言う、光魔法まで使えるのか…神々しい…」
「しかも、上級魔法まで唱えられるとは…あなたは神か…」
レニータはすかさず《ファイアーキャノン》を唱えた。
「ドーーーーーン…」
レベルアップしたレニータの《ファイアーキャノン》…
初めて使った時の《ファイアーストーム》の威力を、遥かに凌駕している。
黒焦げになった【オースティン】の、辺り一面が焼き尽くされ…
隕石でも落ちたかのような窪みが出来ている。
「きゃあああ…死んじゃう、死んじゃう…【オースティン】が死んじゃう…《エクストラヒーリング》!」
【オースティン】は、灰になって砕け散る寸前に治癒され、九死に一生を得た。
「参りましたお嬢様、まさかこれ程とは…」
【オースティン】は跪(ひざまず)き、胸に手を当て敬意を表している。
「お困りになられた際は是非とも、わたくしめに何なりとお申し付けください」
「その前にお嬢様、その駄々洩れの魔力を、隠蔽なされた方が宜しいかと存じます」
「闇魔法の《アビリティハイディング》は…」
「隠蔽と言うより、実際に自分のステータスを、半分に下げる効果があります」
「半分にしても、かなり目立つかと思いますが、無いよりはマシでしょう」
「闇の服を着て、溢れる魔力を抑えるイメージで使用してみて下さいませ」
【オースティン】は実際に使ってみた。
「闇より纏いし黒き衣よ…その者の力を隠したまえ…《アビリティハイディング》!」
【オースティン】の能力は半減した。
レニータも同様にイメージし、新しく闇魔法、《アビリティハイディング》を覚えた。
★☆ メインステータス ☆★《アビリティハイディング発動中・装備分を含む》
≪賢者≫
【レニータ・クラーク】(11歳)[職業=なし]
LV=5(-1)
EXP=464,400(-7,743,000)
HP=315(-265)
MP=460(-410)
SP=305(-305)
●サブステータス
筋力 =175(-145)
丈夫さ=205(-175)
知力 =295(-295)
精神力=285(-285)
持久力=175(-175)
魔力 =320(-320)
素早さ=195(-145)
器用さ=195(-195)
集中力=265(-265)
運 =260(-260)
「この数値であれば、どうにか人として見られるでしょうな」
【オースティン】は、お辞儀をしながら上目遣いでレニータを見ると、ニヤっと笑った。
「ギロツ!…人としてってどういう意味よ!これでも女の子なんだからね!」
レニータは鋭い眼光で睨み返し、また【オースティン】を焼き払おうとした。
「ひいぃーーー…」
【オースティン】は背筋を凍らせて、そそくさと逃げ出した。
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